検査について
不妊症の検査の流れ
検査は月経周期にあわせて
行います
行います
不妊症の検査を行うには、それなりの時間が必要になってきます。月経周期にあわせて検査を行いますので、基本検査だけでも1周期(25~35日)程度が必要になります。時間がかかるように思えるかもしれませんが、「急がば回れ」で妊娠するための近道なのだと考えていただければ良いかと思います。当院では、基本的には、図のようなフローに従って検査をすすめていきます。
不妊検査・治療の基本的な流れ
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月経3日目頃に採血し、ホルモン検査をします。
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御主人の精液検査をします。自宅で採取後2時間以内に持参されるか(採取容器はお渡しします)、来院後採精室で採取していただきます。結果はその場でお知らせします。
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月経開始後10日目前後で、子宮卵管造影をします。翌日も写真をとります。
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排卵日前は頸答粘液や超音波装置で卵胞発育を調べます。
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月経3日目ごろに来院し、前周期の基礎体温の状態から排卵誘発剤などの薬剤の使用を検討します。
※ 上記の流れが必ずしもこの順番通りでなくても問題ありません。以上の基本的な検査、治療をもとに、状態により、必要に応じて検査を追加して行い、妊娠に向けて治療を進めてまいります。
不妊症検査の種類
当院では以下のようなあらゆる種類の不妊症の検査を行っております。
考えられる原因ごとに様々な検査があり、基本的な検査にこれらの検査をあわせて行うことで、ご夫婦ごとに様々である不妊の原因を、細かに探っていきます。
考えられる原因ごとに様々な検査があり、基本的な検査にこれらの検査をあわせて行うことで、ご夫婦ごとに様々である不妊の原因を、細かに探っていきます。
原因 | 検査 | 内容 | 注意事項 他 |
---|---|---|---|
基本検査 | 子宮癌検診、クラミジア、貧血、肝機能、コレステロール、中性脂肪、B型、C型肝炎ウイルスなど | ||
排卵因子 | 1.基礎体温 | 排卵の有無、黄体機能不全などの診断に使用します。 | 排卵の有無、黄体機能不全などの診断に使用します。 |
2.LH、FSH、PRL、 E2検査 |
卵巣ホルモン分泌に指令を送る脳下垂体ホルモンと卵胞ホルモンの検査です。 | 月経開始日より3日前後に、採血しホルモン分泌を見ます。 | |
3.TRHテスト | PRLの潜在的増加を見るための血液検査です。 | 月経開始日より3日前後に、TRHを注射後、プロラクチンの分泌反応をみます。 | |
4.甲状腺ホルモン検査 | 甲状腺ホルモンの異常は、妊娠、流産に影響を与えます。 | 採血を行いホルモンを測定します。 | |
5.抗ミューラー管 ホルモン(AMH)検査 |
卵巣の予備能を調べる検査です。卵巣の年齢が進むと値は低下します。 | 採血による検査です。 | |
6.男性ホルモン測定血糖、インスリン測定 | 排卵に影響を与える男性ホルモン、血糖、インスリンの増加を調べます。 | 排卵前後以外の時期に分泌量の測定を行います。 | |
7.卵胞検査(経膣超音波検査) | 排卵日頃に膣からの超音波画像で卵の発育状態を観察し、排卵が近いかを診断します。 | 排卵が近くなると卵胞が大きくなり、直径2cm前後になります。 | |
8.頚管粘液検査 | 排卵日頃に子宮頚管からの粘液分泌状態、結晶形成を観察します。 | 一般的に排卵日ごろには頚管からの分泌物が多くなります。 | |
9.LH,P測定 | 排卵が近いか、終了しているかを調べます。 | 排卵のころに採血するホルモン測定です。 | |
10.プロゲステロン(P)エストロゲン(E2) | 黄体期のホルモン分泌状態を調べます。黄体機能不全の診断です。 | 高温相7日目ころに採血します。 | |
排卵因子 | 11.子宮卵管造影検査(HSG) | 子宮内に造影剤を注入し、子宮の形と卵管の通過性をレントゲンで診断します。治療効果も大きい検査です。 | 月経終了直後の出血がない状態で、排卵前に行います。透視下で行いますので、過剰な圧を加えることがなく、閉鎖している方以外は痛みはほとんどありません。 |
子宮因子 | 12.子宮鏡検査 | ファイバースコープで子宮内膜、筋腫、内膜ポリープなどを観察します。 | 外来で月経終了後に行います。 |
13.超音波子宮造営法Sonohysterography | 子宮腔内に生理食塩水を注入し、経膣超音波で子宮腔内の内膜ポリープ等を観察します。 | 外来で月経終了後に行います。 | |
14.経膣超音波検査 | 子宮内膜の厚さが受精卵の着床に重要です。薄いと受精卵は着床しません。 | 排卵頃の内膜の厚さなどを超音波で観察します。 | |
頚管因子 | 15.頚管粘液検査 | 上記8と同じ検査です。頚管から粘液を採取します。 | 頚管からの分泌量が少ない場合は精子の上昇が困難なため妊娠率が低下します。 |
16.フーナーテスト (性交後試験) |
本邦では行われることが多い、性交後に子宮に精子が上昇しているかを見る検査です。 | 早朝に性交してから来院し、頚管粘液の中に遡上している精子の数を測定します。 | |
男性因子 | 17.精液検査 | 不妊検査の中でも重要な検査です。精子の数、運動率、奇形、炎症などを検査します。 | 3〜4日の禁欲後、自宅で直接容器に採取し、受付に提出してください。 |
その他 | 18.自己抗体検査 | 流早産、不妊の原因として自己に対する抗体(自己抗体)があります。 | リン脂質などに対する自己抗体を調べます。血液検査です。 |
19.クラミジア抗原、抗体 | 不妊症の方にはかかったことがないと思っている方でも、感染していることが多い。 | 感染の既往のある方は子宮頚管分泌物の検査、既往のない方は血液検査を行います。 | |
20.抗精子抗体 | 精子に対する抗体ができると精子の凝集、不動化が生じ精子が卵管まで到達できません。 | 血液検査です。 | |
21.染色体検査 | 夫、妻ともに血液を採取し、染色体の数、形態などを調べます。 | 血液検査です。 流産を繰り返すご夫婦に行います。 |
酸化ストレス検査に
ついて
当院では、卵子や精子の
老化の原因といわれている
「酸化ストレス」の検査を
行っています
加齢による生殖機能の変化は
下記の2つがあります。
老化の原因といわれている
「酸化ストレス」の検査を
行っています
加齢による生殖機能の変化は
下記の2つがあります。
加齢により卵胞数が減少すると、卵胞予備能(卵巣の中に残っている卵子の目安)は低下します。予備能が低下すると、卵胞発育に必要な日数が短くなったり、長くなったりします。つまり、月経開始から排卵までの日数が短縮したり、遅延したり不安定になるということです。
卵胞の閉鎖が促進され、消費される卵胞の数が増加します。その結果、加速度的に卵子の量が減少していきます。
卵胞の閉鎖が促進され、消費される卵胞の数が増加します。その結果、加速度的に卵子の量が減少していきます。
卵子の質の低下には、酸化ストレスが関与しているとされています。
酸化ストレスの代表格である「活性酸素」は、様々な細胞の老化を促進する要因となるもので、卵子もその例外ではないのです。活性酸素により細胞構成成分の損傷が生じて、その結果、細胞機能低下が起こります。卵子においても同様に質の低下が生じます(精子でも同様です)。
加齢は染色体の数的異常をもたらす重要な因子として知られており、妊娠にも深く関わってくる要素です。活性酸素による卵子の老化が、このことにも大きな影響を与えている事は明らかです。
酸化ストレスの代表格である「活性酸素」は、様々な細胞の老化を促進する要因となるもので、卵子もその例外ではないのです。活性酸素により細胞構成成分の損傷が生じて、その結果、細胞機能低下が起こります。卵子においても同様に質の低下が生じます(精子でも同様です)。
加齢は染色体の数的異常をもたらす重要な因子として知られており、妊娠にも深く関わってくる要素です。活性酸素による卵子の老化が、このことにも大きな影響を与えている事は明らかです。
酸化ストレスとは
酸化ストレスとは、「酸化反応により引き起こされる生体にとって有害な作用」のことです。
運動不足や逆に運動のしすぎ、また偏った食生活や、喫煙などの不健康な生活習慣などによって、活性酸素の生成と消去のバランスがくずれると、酸化ストレスが生じ、老化・老年病(老年期特有の疾病)の原因となる可能性があります。
運動不足や逆に運動のしすぎ、また偏った食生活や、喫煙などの不健康な生活習慣などによって、活性酸素の生成と消去のバランスがくずれると、酸化ストレスが生じ、老化・老年病(老年期特有の疾病)の原因となる可能性があります。
さらに詳しく!
酸化ストレスと卵子の関係
酸化ストレスはミトコンドリアと紡錘糸に影響します
特に、卵細胞因子として卵の成熟や初期胚発生に密接に関与するものとしてミトコンドリアと紡錘糸があげられます。
酸化ストレスはこのミトコンドリアと紡錘糸に影響します。少し難しい話になりますが、ミトコンドリアは加齢によりその数が減少してしまいます。そうすると、エネルギーの元となるATP(アデノシン三リン酸)の産生量が減少します。酸化ストレスによってミトコンドリアの質が低下し、ミトコンドリア機能不全が起こり、エネルギー産生のATP供給が障害されます。
つまり、老化の原因となる酸化ストレスは、ミトコンドリアの機能低下を起こし、それが卵質の低下につながっているのです。
また紡錘糸は染色体の減数分裂を制御していますが、加齢に伴い紡錘体構造異常をきたし、そのことが染色体異常発生の一因となっています。
酸化ストレスはこのミトコンドリアと紡錘糸に影響します。少し難しい話になりますが、ミトコンドリアは加齢によりその数が減少してしまいます。そうすると、エネルギーの元となるATP(アデノシン三リン酸)の産生量が減少します。酸化ストレスによってミトコンドリアの質が低下し、ミトコンドリア機能不全が起こり、エネルギー産生のATP供給が障害されます。
つまり、老化の原因となる酸化ストレスは、ミトコンドリアの機能低下を起こし、それが卵質の低下につながっているのです。
また紡錘糸は染色体の減数分裂を制御していますが、加齢に伴い紡錘体構造異常をきたし、そのことが染色体異常発生の一因となっています。
これらの症状について、ビタミンCやE、コエンザイムQ10などの抗酸化剤を服用することで酸化ストレスを軽減させて、卵の質の低下を抑制する試みも行われています。
酸化ストレスについて気になることのある方は、詳しくはお気軽にご相談下さい。
卵子や精子の質を
低下させる活性酸素
低下させる活性酸素
- 卵子の質の低下は
酸化ストレスが原因 - 活性酸素は、適当量の発生は殺菌作用やエネルギー産生などに有用できますが、過剰に産生されると、いわゆる体をさびつかせ、老化が進むことになります。
すべての病気の9割は活性酸素がもたらす酸化ストレスが原因です。心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化、がん、アトピー、関節リウマチ、気管支喘息、白内障、胃潰瘍、アルツハイマー病など、酸化ストレスが原因の病気はたくさんあります。不妊症の原因の一つとしても酸化ストレスがあります。
アメリカ生殖学会の学会誌であるFertility&Sterility2015年2月号に掲載された論文でも、「酸化ストレスは卵子の質に悪影響を与えている中心的因子であり、また加齢は卵子の染色体の数的異常をもたらす重要な因子であり、それには活性酸素がきわめて重要な役割を演じていることに疑いはない」と記載されています。
つまり、加齢または、早発閉経など卵子の質が低下する原因として酸化ストレスが大きな因子であるということです。当院の測定でも、早発閉経の方は酸化ストレスが高い結果が得られています。
- 精子の質、数も
酸化ストレスが原因 - 精子の質、数も同様で、精液所見に酸化ストレスが関与するという論文は多数あります。酸化ストレスは精子のDNAの変質をもたらし、運動率の低下や精子の機能障害を発生させる主要な原因であり、妊孕(にんよう)性の低下につながります。
また、ビタミンCなどの抗酸化物質の摂取で精液所見が改善したという報告もあります。
- 酸化ストレスは活性酸素と
抗酸化物質のバランス - 過剰なカロリーの摂取は活性酸素の放出を促し、たばこに伴う酸化ストレスは血流を障害し体外受精の成功率を低下させるという報告もあり、生活習慣の影響も大きいのです。また、紫外線や電磁波、不規則な生活、過度の運動、偏った食生活、肥満なども活性酸素を増やす原因になっています。
運動は体にいいと考えている方も多いと思いますが、やりすぎは逆に体には害となります。体内に活性酸素の発生が多くなるからです。
- 抗酸化物質の摂取
- 一方、活性酸素を打ち消す抗酸化酵素の産生というシステムが体にはあります。
しかし、この体内の抗酸化酵素の産生が低下すると、活性酸素が増加し、その結果、酸化ストレスが強くなります。体外から取り入れることができるビタミンCやE、コエンザイムQ10やポリフェノールなどは抗酸化物質であり、活性酸素に対抗するものとして摂取すれば酸化ストレスは減少します。
- 酸化ストレス、
抗酸化力の測定の意義 - 酸化ストレスやそれを打ち消す抗酸化力を測定することにより、今後予想される卵子の老化リスクを知ることができます。その結果をもとに生活習慣の改善や抗酸化物質を服用することにより、卵子、精子の質を保つことができます。また、先に述べましたように酸化ストレスは万病のもとであり、不妊症とは関係なく、将来的な病気の発症リスクを知るために、酸化ストレスや抗酸化力を測定して現在の状態を知り、生活習慣を見直すきっかけになればいいと思います。当院では酸化ストレス、抗酸化力を調べています。結果は20分ほどで判明します。精液所見の悪いご主人も測定をお勧めしています。